「ぼくたちの砦」(エリザベス・レアード)

ぼくたちの砦

ぼくたちの砦

 サッカーのチャンピオンになることを夢にイスラエル占領下のパレスチナという苛酷な環境で生き抜く少年カリームの物語です。
 イスラエルの占領にどれだけの大義があるかは知りませんが、実際彼らのしていることは戦車を乗り回してサッカーをしようとしている子供の妨害をすることです。いい大人のやることではありません。
 深刻なパレスチナ問題を抜きに考えると、この話はカリームとジャマール兄のおばかな兄弟の兄弟愛の物語として楽しめます。ジャマールは弟を使って好きな女の子の写真を手に入れようとしたり、女の子にプレゼントするためにに弟の好きなゲームソフトを売り飛ばしてしまったり、愛すべきバカ兄貴っぷりを発揮してくれます。そこらにいくらでもいそうな平凡なおばか兄弟です。それだけに、彼らがいざというときに命がけの兄弟愛を見せるのが切ないです。