「笛吹き男とサクセス塾の秘密」(はやみねかおる)

 笛吹男の都市伝説と、必ず成績が上がるサクセス塾の謎。夢水清志郎といつもの面々はサクセス塾の合宿に潜入します。サクセス塾の生徒130人を消すという笛吹男の犯行予告を阻止することはできるのか?ひさびさに岩崎姉妹の三つ子設定が生きたシリーズ第12作です。
 空気が重苦しいです。亜衣とレーチはラブラブだし、いつの間にか真衣と美衣にも男が出きてるし、楽しいこともあるんですが、それでもこの空気の重さはいかんともしがたいです。受験生の憂鬱がひしひしと伝わってきます。亜衣は「おもしろいマンガがいっぱいおいてある歯医者さんの待合室」といってます。おもしろいたとえですが、これは歯医者程度の鬱度ではないと思います。
 塾の大人達は勝手な教育論議を繰り広げますが、結局受験戦争を生きるのは当事者である子供でしかありません。この自覚を持って主体的に生きる子供達を描いていることが、はやみねかおるの児童文学作家としての、そして元教師としての良心だと思います。
 それにしてもサクセス塾の必ず成績が上がるトリックですが、そんなことで成績が上がるなら苦労はないですよ。