その他今月読んだ児童書

 やっぱり角川の「銀のさじ」はSFのレーベルなんですね。コールドスリープにより数百年後の世界で目覚めた少年臨の物語です。戦争と自然災害で文明は崩壊していました。臨は病院のコンピュータと看護師ロボットによって自動的に保護されていましたが、その病院の周辺には廃墟と荒野しかありませんでした。さて、この世界で村山早紀はどんな物語を紡ぎ上げるのでしょうか。まだシリーズは始まったばかりで今後の展開は全く読めません。第1巻に登場した伏線らしきものをすべて回収しようとしたら大変なことになりそうですし。
ふしぎやさん (おはなしさいた)

ふしぎやさん (おはなしさいた)

 センスのいい幼年童話です。かえるやたんぼやきつねなど、いかにも日本風の道具立てを使っていながら、一方で女神さまや魔女を登場させ通貨単位を異国風にするミスマッチが、なぜだかうまく調和の取れた魅力的な世界をつくりあげています。 雪解けやタンポポの綿毛や彗星を素材として、この世界の不思議さや美しさを高らかにうたいあげる良作でした。
獣の奏者(2) (講談社青い鳥文庫)

獣の奏者(2) (講談社青い鳥文庫)

 「獣の奏者青い鳥文庫版の2巻。本編は面白いに決まっているので特に言うことはありません。おまけの上橋菜穂子石崎洋司の対談も興味深かったです。 「摩訶不思議ネコ ムスビ」第4巻。タイトルの通り迷宮がテーマですが、テセウスを脇に置いてアリアドネミノタウロスの物語として語り直しているところがユニークです。
名探偵 宵宮月乃 5つの事件 (講談社青い鳥文庫)

名探偵 宵宮月乃 5つの事件 (講談社青い鳥文庫)

 暗号や密室やアリバイ崩しなど、ミステリの楽しみがいろいろ味わえる短編集です。夢水清志郎はもうすぐ退場してしまいますが、宵宮月乃がいればしばらく青い鳥文庫から本格の火が消えることはありませんね。
学び舎は血を招く メフィスト学園1 (講談社ノベルス)

学び舎は血を招く メフィスト学園1 (講談社ノベルス)

 児童書ではありませんが、楠木誠一郎の「タイムスリップ探偵団」の外伝が収録されていました。
風の館の物語(3) (文学の扉)

風の館の物語(3) (文学の扉)

 シリーズ第3巻。ようやく作品世界の空気がいい具合に剣呑になってきました。
雨ふる本屋 (単行本図書)

雨ふる本屋 (単行本図書)

 いや、本と雨は相性最悪でしょう。それ以前に、水に記憶力があるみたいなイグノーベル賞級のトンデモを深い考え無しに流用するのはいただけません。
なにわ春風堂1なぞの金まき男

なにわ春風堂1なぞの金まき男

なにわ春風堂2首だけのお化けが笑う

なにわ春風堂2首だけのお化けが笑う

なにわ春風堂3炎をこえて生きてゆけ

なにわ春風堂3炎をこえて生きてゆけ

 江戸時代の大阪を舞台に、寺子屋で学ぶ子供たちがいろんな事件に遭遇するお話。お説教が先行しているため、物語としてのおもしろさは多少犠牲にされているきらいはありますが、頭を使うおもしろさは体験できると思います。理性的に生きることの大切さを説く作者の姿勢には共感できました。
S力人情商店街 (3) (YA!フロンティア16)

S力人情商店街 (3) (YA!フロンティア16)

 シリーズ第3巻。なるほど、この作品は茶子のハーレム建造の物語だったのですか。さすが令丈ヒロ子はツボを心得ていらっしゃる。
椿先生、出番です! (おはなしルネッサンス)

椿先生、出番です! (おはなしルネッサンス)

 あの花形みつるが幼稚園を舞台にした幼年童話を、しかも幼稚園の先生は元ヤン。これだけで話題性としては充分だと思います。わたしはあまり幼年ものには明るくないので、ぜひ詳しい方にこれが従来の幼年ものと比べてどうなのか分析してもらいたいです。
ハルムスの小さな船

ハルムスの小さな船

 ロシアの不条理童話作家ダニイル・ハルムスの作品集です。男が恋人にいきなりアダムとイヴになろうと言い出して「あんた、どうしたの?気でも狂ったの?」と言われる話とか、プーキシンがゴーゴリに躓き、ゴーゴリプーシキンに躓きを何度も繰り返してお互いにののしり合う話とか、わけがわからない愉快で不気味な話がたくさん収められています。イラストは西岡千晶。