「炎の龍と最後の秘密 マジカルストーンを探せ! Part 6」(関田涙)

炎の龍と最後の秘密 マジカルストーンを探せ! Part6 (講談社青い鳥文庫)

炎の龍と最後の秘密 マジカルストーンを探せ! Part6 (講談社青い鳥文庫)

男性作家が女の子ふたり組のエス的な友情を美しく描くことは、青い鳥文庫の伝統と言えそうです。もっとも典型的なのはクレヨン王国で、「十二か月」のユカとマリねえさん、「黒の銀行」の美穂と彰子ちゃん、「12妖怪の結婚式」他のルカ・モニカの探偵コンビと、例を挙げればきりがありません。最近では、大ヒットシリーズの「黒魔女さんが通る!!」も、チョコとギュービッドさまの師弟愛(姉妹愛?)がテーマになっています。
「マジカルストーンを探せ!」も、その伝統を受け継いだシリーズだと言えます。日向と月乃の友情は非常に強固です。特に日向は、病弱な月乃を自分が守らなければならないという使命感に燃えていて、毎回のように献身的な友情を見せてくれます。おそらく日向が月乃の推理力に絶対の信頼を置いているのは、月乃の探偵としての能力の高さを正当に評価しているからではありません。友達だから信じている、ただそれだけなのだと思います。
友情の強さのほかに注目してもらいたいのは、ふたりの上品さです。彼女たちの口調を見てください。「……だわ」「……なのよ」という前世紀の「女の子らしい」語尾を使用しています。
強固な友情と上品さによって日向と月乃は非現実的な存在になっていますが、現実離れしているからこそ彼女たちの関係性は魅力的なものになっています。
さて、第六巻ではふたりに最大の危機が訪れます。マジカルストーン絡みの世界の危機も訪れるのですが、そこはわりとどうでもいい。最大の危機とは月乃の父親の転勤で月乃が遠くへ引っ越してしまうということです。関係性の危機の前では、世界の危機などいとも簡単に後退していきます。
第六巻の課題は最後のマジカルストーンを二日間で見つけ出すことでした。厳しいタイムリミットですが、ふたりの前にはそれ以上に厳しい引っ越しというタイムリミットが迫っています。物語の速度は悲しみの速度に呼応して加速していきます。