- 作者: 関田涙,間宮彩智
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/16
- メディア: 新書
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結論としては、「月乃超かっこいい!」の一言ですみます。逆境を設定することで月乃の頭の良さと度胸が引き立てられています。青い鳥文庫では関田涙の新シリーズが予定されていますが、このキャラクターにもう会えなくなるのはあまりに寂しいので、番外編だけでも継続させてもらいたいです。
問題は、このシリーズの友情物語としての側面です。このシリーズは現実のわずらわしい人間関係にはあえて目をつぶり、理想的な友情を描くことで読者を楽しませようとしているものと、わたしは理解していました。しかし、この番外編三巻では、タイトルから「トモダチ」というテーマに正面から挑もうという意志を打ち出しています。しかも本の表紙には、「トモダチ」を駒にしてゲームの盤上で弄んでいる月乃が描かれています。これでは今までの見解を撤回せざるを得ません。
物語の最後、月乃は自分は病弱だから一人では生きていけないので薄氷を踏むような覚悟で他人を信用していること、「トモダチ」をつくることを大変難しいことだと思っていることを吐露します。しかし、このシリーズの語り手は、健康で「トモダチ」をつくることなんて簡単だと思っている日向です。日向には月乃の屈託が理解できないので、日向の語りは無邪気に無自覚に月乃の暗い面を隠蔽してしまいます。
「マジスト」シリーズの語り手が月乃ではなく日向なのはなぜか。答えは考えるまでもありません。このシリーズが本格ミステリだからです。ワトソン役が語り手になるのは当然です。でも、語り手が日向である理由はそれだけではなかったのかもしれません。もしかしたら日向の語りはいろいろなものを隠蔽していたのかもしれません。その視点でこのシリーズを読み直してみると……、いや、怖いからそれは止めておきましょう。