『昔ガヨカッタハズガナイ』(山中恒)

昔ガヨカッタハズガナイ: ボクラ少国民のトラウマ (山中恒少国民文庫)

昔ガヨカッタハズガナイ: ボクラ少国民のトラウマ (山中恒少国民文庫)

新聞の投書欄に「昔は〜だったのに、最近の若者はけしからん」というような趣旨のが載っていて、投稿者の年齢を見たら10代の若者、「おまえのいう昔はいつのことなんじゃ!?」とつっこみを入れたくなった経験はないでしょうか。真面目な若者ほど大人のいう「昔ガヨカッタ」を素直に信じてしまうものですが、多くの場合それはデタラメです。そんなデタラメを信じてしまう純粋な若者にぜひ読んでもらいたのが、辺境社から加筆修正版が出たこの本です。
わたしがこの本を読んだのは中学生の時でした。そのとき目から鱗がポロポロ落ちたのをよく覚えています。
山中恒は資料を基に、「昔はみんな大家族だった」「どこの家も子供が多かった」などという言説が全くの虚構であったことを証明していきます。
わたしがもっとも驚いたのが「父権」に関する記述でした。この本を読むまでは父権というのは何か抽象的な権威みたいなものだと思い込んでいましたが、それが大間違い。戦前の民法では「子の居所を指定できる」「子を懲戒場に入れることができる」「子の営業に許可を与えることができる」などという、今の視点で見れば無茶苦茶な権限が父親には与えられていたのだそうです。
よく知らないことを語るときはきちんと資料に当たらなければならないという大切なことを教えてもらった、思い出深い本です。今回の復刊をきっかけにぜひ若い人に読んでもらいたいです。