『恐怖のむかし遊び』(にかいどう青)

恐怖のむかし遊び (講談社青い鳥文庫)

恐怖のむかし遊び (講談社青い鳥文庫)

「ふしぎ古書店」シリーズのにかいどう青によるホラー短編集。第1話の「ふたり、かくれんぼ」は、ぬいぐるみを水没させたりおなかを刃物で刺したりする猟奇的なかくれんぼをする話。第2話「影を踏む少女」は、中学校の映研が廃ホテルでホラー映画を撮る話。第3話「***さんが転んだ」は、夜中にひとりでだるまさんが転んだをすることでクラスメイトに呪いをかける少女の話。第4話「うしろにいるよ」は、屋根裏部屋で見つけた3体の球体関節人形とかごめかごめをする、「人でなしの恋」的なロマンチックな話です。
ミステリ要素の強い話が多いので、各作品の内容を詳しく解説できないのが残念なところです。語りの方法も各話趣向が凝らされていて、作者のたくらみが感じさせられます。たとえば、第3話での仮名の付け方が〈Aちゃん〉〈ヒ○ミ〉〈××くん〉〈M・M〉とまったく統一性がないところなど、不穏な不気味さが演出されています。
人格が破綻している子どもがたくさん登場するところも、みどころのひとつです。第3話の語り手の〈ヒ○ミ〉は、みんなが〈Aちゃん〉の悪口を言っているのを聞くのが大好き。「みんなが話すAちゃんのむかつくところを聞くと、心が落ちつきます」「おおぜいからきらわれていることに気づかず、みんなと友だちだと思いこんでい笑っているAちゃんは、かわいそうだと思います」「わたしは、かわいいだけのAちゃんは、あまり好きではありませんが、みんなからうとまれている、かわいそうなAちゃんのことはきらいではないのです」と、人でなし発言を連発します。そんな〈ヒ○ミ〉がまったく罪悪感なしにクラスメイトを呪っていく様子は、虚ろな怖さを感じさせます。
スプラッタなホラーとしてもちろん怖く、さらににかいどう青らしく文学をこじらせていて、さまざまな仕掛けを楽しめる作品集となっています。「ふしぎ古書店」シリーズは今度出る第7巻をもって完結するようですが、この先児童文学作家としてにかいどう青がどのような道を歩むのか、期待が高まります。