その他今月読んだ児童書

令丈ヒロ子原作の作品を吉田玲子脚本でアニメ映画化して、それをさらに原作者本人がノベライズする。これがいかにヤバいことなのかということは、わかる人にはわかるはずです。本編とは異なりおっこの一人称語りにすることで、孤児小説としての悲劇性が高められています。
鳥達のバラード アンプラグド

鳥達のバラード アンプラグド

記憶は時間とともに塗り替えられるから、その時、わたしが何を感じたのかは正確にはわからない。
(p173)

語り手は、このようなことを自覚してしまっている人物です。過去を振り返る語りだからなのか、語り手の人格的な特性なのか、離人感のある文章に味わいがあります。

シロガラス5 青い目のふたご

シロガラス5 青い目のふたご

おもしろくなりそうな予感をどんどん上げていくのに話があんまり進まないのがこのシリーズのたちの悪いところ。刊行ペース上げてください。
波うちぎわのシアン

波うちぎわのシアン

語りの仕掛けは凝っていますが、胎内記憶という危ない橋を渡ってしまっている時点で救いようがありません。ある登場人物は、子どもの胎内記憶についてこう語ります。

子どもは、世界を見聞きし、おぼえている。おとなとおなじ。ひとりのにんげんだって、おもえるでしょう。
(p101-102)

同質性でしか人間の尊厳を捉えられないのであれば、それはあまりにも貧しい人間観です。