『あさって町のフミオくん』(昼田弥子)

あさって町のフミオくん

あさって町のフミオくん

小学3年生のフミオくんの周りで起こる不思議現象を描いた、不条理寄りの童話集。
第1話「ぼくはフミオ」は、買い物帰りのフミオくんが、縞模様の服を着ていたためにシマウマのお母さんに自分の息子だと勘違いされて拉致される話です。シマウマともみあっているうちに持っていた牛乳をかぶってしまうと、今度は牛乳のにおいに釣られたウシのお母さんがやってきて、またも自分の息子だと思いこみ拉致に及びます。
まったく異なる判断基準で行動する人々の怖さがいい具合に描かれています。ウシと口論しているうちにうっかり口が滑って「だから、ぼく、フミオじゃなくて……」と言ってしまい、ウシを満足させてしまう場面などは、恐ろしさとギャグの配分が見事。高畠邦生も恐怖寄りに仕事をしていて、フミオくんが牛乳瓶に閉じこめられている場面などはぞっとさせられます。
第2話「がいこつおじさん」は、あまりの暑さで体を脱いでがいこつだけになったおじさんとプールに遊びに行く話です。脂肪がないから浮くことができずプールの底に沈んでしまうなど、がいこつならではの失敗が楽しいです。フミオにとっておじさんは一緒に遊んでくれる大好きな人ですが、一方でお父さんはおじさんと違ってまともな人でよかったとも思います。こういう子どもらしい無邪気で残酷な選別も笑えます。