『あらしの白ばと 地獄神の巻 パリ冒険の巻』(西條八十)


ご好評にこたえて、「あらしの白ばと」が、ここにふたたび登場!! 怪しい黒ふく面の男たちとの間に手に汗にぎる戦いが早くも始まる!!

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西條八十の伝説的怪作少女小説の「あらしの白ばと」復刊事業第4弾は、第4部「地獄神の巻」第5部「パリ冒険の巻」の豪華二本立て。

地獄神の巻

第4部で白ばとグループは、外国の地獄神の印が押された札が大量に出回るという怪事件に巻き込まれます。奇怪な札を手にした者が次々と黒覆面の男に殺されるという事件の不気味さが魅力的です。白ばとグループの一番の豪傑吉田武子さんは柔道の武者修行のために不在のなかで、物語が始まってすぐ辻晴子さんは銃弾に倒れ日高ゆかりさんはさらわれてしまい、いきなり大ピンチ。展開がスピーディーで、腕力よりも知略で戦う場面が目立つので、シリーズの他の作品と比べてかなり引き締まった感じがします。

パリ冒険の巻

第5部は単身パリ旅行に赴いた武子さんが、怪事件に巻き込まれます、こちらも導入部で提示される謎が期待感を煽ってくれます。奇妙な老婆に導かれるように洋館に入った武子さんは、まるで大地震が起こったかのように荒らされた部屋でむごたらしくつぶされた男の死骸を発見します。遠い国でも武子さんは薄幸の美少女を守って大暴れ。表紙イラストにも出ていますが、西條作品ではおなじみのあれも出ます。最近我々は少女小説にあれが出てきて少女に倒されるのが当たり前のように感じていますが、おそらく感覚が麻痺してしまったでしょう。
それはそうと、第4部でも第5部でも武子さんが新たな美少女といい感じになるのはちょっと引っかかります。まさかとは思いますが西條先生、武子さんは妻帯者だということを忘れてしまったということはないですよね。
ともあれ、2015年12月から始まった「あらしの白ばと」復刊事情もめでたく終了しました。例年年末年始に刊行されていたので、2015年から2018年は、この物語の荒波に乗せられて気持ちよく年忘れをすることができました。編者の芦辺拓先生をはじめ、復刊に関わった方々に心より感謝します。