『野生のロボット』(ピーター・ブラウン/作・絵)

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ)

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ)

無人島に漂着したロボットが島の動物たちから学びながら生き延びるすべを獲得していくSF童話です。
ラッコが偶然起動ボタンを押したために目覚めたロボットのロズは、はじめは正体不明の異物として動物たちから警戒されます。ロズはナナフシの擬態を見て学習し、体中に泥を塗って木の葉やコケでおおい、「歩くしげみ」に擬態します。とりあえず身の安全は確保されたので、ロズはさらに動物たちの行動を観察して学習を続けます。やがてロズは、孤児となったガンの赤ちゃんを拾います。その母親役を引き受けることによって、だんだん動物たちのなかにとけこんでいきます。
ヒトのいない無人島が舞台なので、作品世界にはある種のポスト・アポカリプスSFの持つような奇妙な優しさが漂っています。ロズが知りあう動物たちは、擬態が得意だったり工作が得意だったり、さまざまな特技と知性を持っています。ロズはヒトの知恵も持っていますが、さまざまな動物たちの持つ知性の前では、それはただ火の扱いが多少得意だという程度のものに相対化されます。ヒトを特別視しない世界のあり方が心地いいです。
ロズがだんだん動物たちと親しくなり、赤ちゃんも大きくなっていって、最後に危機が訪れドッタンバッタン大騒ぎになるという物語の流れも、起伏に富んでいて熱いです。続編が出ているようなので、ぜひこっちも邦訳を出してもらいたいです。
The Wild Robot Escapes (English Edition)

The Wild Robot Escapes (English Edition)