オーガイおじさんの馬がいく―ぼくの東京ミステリー (PHP創作シリーズ)
- 作者: 新冬二,長谷川京平
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1994/02
- メディア: 単行本
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キヨシ少年が引っ越してきたマンションは、窓から墓場が見えるというロマンチックなロケーションでした。花冷えの夜に窓から墓場の桜を優雅に眺めていると、咳払いの音が聞こえてきます。気になって外に出ると、1メートルほどの木の柄がついたシャベルのようなものを洗っている不審なおじさんに出会いました、それがモリオーガイおじさんでした。それからキヨシ少年はオーガイおじさんと何度も会って、乗っている馬の馬糞の始末をさせられたり、そのお礼にセイヨウケンでごはんをおごってもらったりします。
変な棒で馬糞を片付けようとするオーガイおじさんに、キヨシがちいさいシャベルを使ったほうがいいと提案すると、即座に「それはちがう」と否定。「やっぱりわたしには、きちんとしたスタイルが必要だ」と、謎のこだわりをみせます。
オーガイおじさんは特に怨念があって化けて出ているわけではなく、かといって少年にありがたいお説教をしてくれるわけでもありません。ただ馬に乗って散歩するだけで、その痕跡は馬糞のみ。死者や過去とのゆるいつながりを感じされてくれる、とても心地よい作品世界になっています。
ヘルンさんの茶色のかばん―ぼくの東京ミステリー〈2〉 (PHP創作シリーズ)
- 作者: 新冬二,長谷川京平
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1995/07
- メディア: 単行本
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小泉八雲がゲストなので、1巻よりも作品世界の空気に不穏さが増し、谷中は魔境めいた魅力を見せてくれます。
「わたしには、わたしの時間があるのです」(中略)
「じかん*1には、場所がついているのです。場所のないじかんは、じかんではありません」(中略)
「そうです。かぎられた場所にしか、わたしの時間はない、つまりかぎられた場所にしかわたしはいられない……」
*1:ひらがな表記の「じかん」には傍点がついている