『スベらない同盟』(にかいどう青)

スベらない同盟

スベらない同盟

にかいどう青は小説をあいしている。ゆえに、小説を信じていない。にかいどう青は言葉をあいしている。ゆえに、言葉を信じていない。
新作を発表するたびにその激ヤバさに対する読者の信頼を高めていくにかいどう青ですが、今回も期待を裏切ることはありませんでした。スクールカースト上位軽音部のレオとスクールカースト下位転校生のケイがコンビを組んで文化祭で漫才を披露しようとする物語です。レオは先生から頼まれてケイの面倒をみるようになります。そして、ケイが百合ライトノベルの二次創作を書いているのをみてギャグの才能があることを知り、カースト上昇のために一緒に漫才をやるように誘います。
ストーリー展開や仕掛けは、帯に書いてある内容から予想できる範囲を大きく越えてはいません。ただし、その毒の濃度は異常に高いです。にかいどう青は、カースト下位者に手をさしのべる上位者の傲慢や自己満足も、それを利用しようとする下位者の小狡さも、みもふたもなく白日の下に暴き立ててしまいます。善意の存在しない人間関係のなかで、それでも摩擦で生じる燐光のような希望に縋ろうとします。
にかいどう青は創作をあいしているがゆえに、創作を信じていません。だからこそ、作品内の創作である話芸が、かなしいまでの輝きをみせます。
作中に怖い場面はたくさんありますが、なかでももっとも怖いのは、レオがある大人から励ましを受ける場面です。

「おとなのほうが、子どもよりかは、たいへんじゃない。うんざりすることも多いけど、学校に行かなくてもいいんだぞ。それって最高じゃないか」

閉塞した学校生活で苦しんでいる子どもに未来への期待を持たせる、まっとうなお説教のようにみえます。ただし、この台詞を言っているのは、大人になっても学校に通っている先生なんですよね。怖い怖い怖い。