『すきっていわなきゃだめ?』(辻村深月/作 今日マチ子/絵)

恋の絵本 (2) すきって いわなきゃ だめ?

恋の絵本 (2) すきって いわなきゃ だめ?

恋愛観や結婚観、ジェンダー観」のアップデートを意図して瀧井朝世が企画した「恋の絵本」シリーズの第2弾。著者が辻村深月今日マチ子となると、当然警戒しながら読まねばなりません。
でも実は、そこはこの作品でもっとも重要なポイントではなさそうです。素直にタイトルの「すきっていわなきゃだめ?」という素朴な疑問を正面から受け取るべきです。
すきなひとに告白することが周囲で流行し、主人公はみっちゃんから「すきな ひと いないの?」「すきな ひとが いるなら、 すきって いわないの?」と圧力をかけられます。このような恋愛・性愛に関わるあらゆる圧力から人は解放されるべきであるという方向に、時代は進んでいます。
たちが悪いのは、みっちゃんの背後に骸骨の標本が配置されていて、それが笑っているようにみえることです。つまり、エロスとタナトスは表裏一体であり、性愛は死を生み出す行為にほかならないといっているわけですね。骸骨の嘲笑にこそ、この作品の眼目はあります。