『12歳で死んだあの子は』(西田俊也)

12歳で死んだあの子は (児童書)

12歳で死んだあの子は (児童書)

大学の附属小学校に通っていたが公立中に進学した須藤洋詩は、中2の秋に小学校の同窓会に参加しました。参加前は少しの不安を感じていながらも、それなりに楽しい時間を過ごすことができましたが、ひとつひっかかることが残りました。それは、小6で亡くなった同級生の鈴元育郎の話題を誰も出さなかったこと。須藤は何人かの仲間とともに、鈴元のお墓に会いに行く計画を主導することになります。
エリートの子ども、同窓会……このキーワードから悪い児童文学読みは、きっと凄惨な殺人事件の真相が明かされる話になるのだろうなと予想することでしょう*1。そこまでひどいことにはならないので安心してください。
附属小から附属中に進学した生徒たちが附属中にも他の私立にも行かず公立に進学した生徒を「島流し」扱いするような感じの、嫌らしい側面はあります。だたしそれよりもこの設定は、それなりに繊細で頭のよい子どもたちの群像を描くためのものとして機能していて、作品の空気感は悪くはありません。
主人公は「島流し」の身であり、そもそも生前の鈴元とは特別仲がよかったわけでもなく、どちらかというと傍観者的・非当事者的位置にいます。その立ち位置から、元同級生の人生を眺めていきます。子どもといえど、死を含め人生は複雑に分岐していきます。そうした人生の機微がしっとりと描かれているところに、この作品の魅力はあります。