『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら三桃)

思いはいのり、言葉はつばさ

思いはいのり、言葉はつばさ

旋盤だったり鷹匠だったり珍しい素材を見つけてきてYAに仕上げる作風で知られるまはら三桃ですが、今回は中国の女書・結交姉妹という素材を拾ってきました。まはら三桃は現代を舞台にしたYAを主にものしていたので、異国の歴史ものというのは、あまりなかった試みなのではないかと思われます。
男には秘密で女のあいだでのみ伝わってきた女書は、自由と抵抗の象徴です。女書を知ったチャオミンはその美しさに魅入られてしまいます。
字を覚えるとなにができるかというと、恋文を書くことができるようになるのです。チャオミンは誰もが憧れる女性であるシューインから、姉妹の契りを結びたいという申し込みの手紙を受け取ります。シューインの手紙は、字も文章も優美なものでしたが、チャオミンのは比べるべくもないもの。であっても思いを伝えることはできるのだという希望が光り輝きます。
文字が自由の象徴なのであるとすれば、奪われた自由を体現するするのは纏足です。物語の終盤では靴が意外な役割を果たします。悲劇を笑いに転化するのは、物語の原初的な力です。その素朴な力に励まされます。