『真夜中の妖精』(湯湯)

真夜中の妖精 (トゥートゥルとふしぎな友だち)

真夜中の妖精 (トゥートゥルとふしぎな友だち)

7歳のトゥートゥルは、耳が聞こえない子。ひとりで池のほとりの柳の木に座って、遠く離れた正月の芝居を見物しています。
平澤朋子のイラストがよくて、トゥートゥルの孤独をうまく演出しています。それはつらい孤独ではなく、むしろ楽しい孤独です。トゥートゥルはひとりで芝居や美食を楽しみ、人から離れた柳の上の特等席で豊かな時間を過ごしているのです。
そんなトゥートゥルでしたが、池の上で自分と同じようにひとりで芝居見物をしている女の子を見つけて友だちになってからは、さらに充実した時間を得ることになります。
池の上に浮かんでいて緑色の服を着ている女の子は、どう見てもこの世のものではありません。異形のものと芝居、舞台、虚構が重なり合って幻想的な世界が構築されていきます。
そして結末は……。志怪小説の伝統を持つ中国、そして急速に重百合が発展してきている中国。その文化力のすさまじさをみせつけるかのような美しい幕引きを迎えることになります。