『イマジナリーフレンドと』(ミシェル・クエヴァス)

イマジナリーフレンドと (児童単行本)

イマジナリーフレンドと (児童単行本)

語り手のジャック・パピエは、自分のことを「みんなのきらわれ者」だと認識しています。ふたごの妹フラーを除くみんなから無視同然の扱いを受けています。あるとき、妹がいつまでたってもイマジナリーフレンドに耽溺していることを心配して両親が話し合っているのを、ジャックは聞いてしまいます。妹が勝手に想像上の友だちなんてのを作っているのは自分に対する裏切りだと思ったジャックは、自分もスーパー・ニシンドラゴンというイマジナリーフレンドをでっちあげようとします。
カバーイラストや導入部から容易に予想がつくとおり、実はジャックがフラーのイマジナリーフレンドであったという仕掛けになっています。イマジナリーフレンドが主役になるのはA.F.ハロルドの『ぼくが消えないうちに』と同趣向ですが、本人がそれに気づいていないというシチュエーションをコメディにしているところに『イマジナリーフレンドと』のおもしろさがあります。本人がそのことを自覚すると、それならば「みんな(やっぱり)ジャック・パピエをきらっている」という章タイトルは表現が不適切だと、事後に書きかえるというひねくれた遊びもなされています。
主人公の正体が露見したのち、ジャックは自由を求めて自分の境遇からの脱出を図ります。しかし、イマジナリーフレンドを支配するお役所的なシステムが立ちふさがり、なかなかうまくいきません。中盤も、コメディ色強く物語は進行します。となると、しっとりした感じのカバーイラストは表紙詐欺ではないかという疑惑が浮上してきますが、そこがどうなるかは読んでのお楽しみということで。