『メロンに付いていた手紙』(本田有明)

メロンに付いていた手紙

メロンに付いていた手紙

12歳の誕生日プレゼントということでメロンを買ってもらった海斗は、結局家族みんなで食べることになったのにぶつくさ言いながらも、箱の中に手紙が入っていたことに気づきます。字の感じから同じくらいの年の子が書いたのだろうということになり、メロンの感想の手紙を送ると、夕張から返信が来て、なんやかんやで夏休みに遊びに行くことになりました。
社会科見学や調べ学習的な要素が楽しい作品です。新しい友だちがほしい、知らないところにいってみたいという素朴な願望が物語を駆動するので、すいすい読み進めていけます。親の説得からはじまり、段階を踏んで話が進んでいくので、わかりやすいです。
この作品の美点は、とにかくわかりやすいところにあります。夕張の事情についても、市の広報誌に載ってる人口の増減をみて、1ヶ月でこれだけ減っているからこのペースで1年たつと人口の5%がいなくなることになると、シビアな数字で現実を突きつけてきます。
文章も平易で、比喩も素直。メロン畑をみたときの海斗の感想が「いちめんのメロン いちめんのメロン いちめんのメロン いちめんのメロン」と、教科書に載ってるメジャー作品をパクらせることで親しみやすさを演出しているのもうまいです。
小学校中・高学年以上向けの作品となると、ある程度読める子向けに文章がチューンされているものが多くなってきます。そんななかでこのなじみやすさは貴重で、幅広い層の子どもにアプローチできる作品になっています。