『だれもしらない図書館のひみつ』(北川チハル)

だれもしらない図書館のひみつ

だれもしらない図書館のひみつ

夜長小学校の学校図書館・夜長森図書館には、秘密がありました。夜中になると壊れているはずの木彫りのオルゴール人形マザーブックが鳴ります。それを合図に、館内の本に頭や手足が生え動き出すのです。
ただし、館内の本には格差があります。人気があって館内で読まれたり(おとも)貸し出されたり(おとまり)する本が幅をきかせ、そうではない本は肩身が狭く隅に追いやられているのです。主人公の『ひかげのきりかぶ』は、誰からも手に取られたことのない不人気本。しかも、自分になにが書いてあるのかすら知りません。新しく図書館に来た本はまず司書のしおりさんが音読するので、みんなそれで自分の内容を知ることになります。しかし、『ひかげのきりかぶ』だけしおりさんに読んでもらっていません。
そんな図書館で、本が次々と消える事件が起こります。盗難防止のバーコードが切り取られているので、出来心ではなく確たる犯意を持った犯罪のようです。仲間がどんどん行方不明になるホラー展開には、なかなかぞっとさせられます。そのうえ、内輪もめまで起こります。はじめは不人気な『ひかげのきりかぶ』が犯人ではないかと疑われていました。人気者の『ヒーローマン』が率先して自警団を始めると、当初はみんな協力的だったのに、やがて飽きてライバルを消すために『ヒーローマン』が犯行を行ったのではないかと疑うようになる始末。図書館の本が命を持つという楽しげな設定なのに、なんともエグい展開が続きます。
しかし、その憂鬱な展開を乗り越えた先に、圧倒的肯定感に満ちた優しい世界が待っています。