『うちの弟、どうしたらいい?』(エリナー・クライマー)

うちの弟,どうしたらいい?

うちの弟,どうしたらいい?

父が亡くなり、母が「弟をたのむわね」という無責任な言葉だけを残して家出したため、12歳のアニーは祖母と弟のスティーヴィーと3人で暮らしています。祖母は怒りっぽく、スティーヴィーは問題ばかり起こすため、アニーの気苦労は絶えません。ところが、スティーヴィーの担任がストーバー先生という若い女性に変わってから、変化の兆しが訪れます。しかしそのストーバー先生もふたりの前から姿を消してしまいます。アニーはスティーヴィーとふたりだけで長距離列車に乗り、ストーバー先生が住んでいるらしい場所まで旅をしようと決意します。
さて、ストーバー先生の住んでいる場所は、圧倒的善意に満ちた別世界でした。そこの人々は駅から出て途方に暮れる姉弟ナチュラルに手助けして、ストーバー先生の家まで導いてくれます。ストーバー先生の家はアニーが想像していたような裕福そうな家ではありませんでしたが、幸福感に満ちた場所でした。
この旅によって、姉弟に目にみえる具体的な変化があったわけではありません。しかし、チルチルとミチルが旅を通して青い鳥が元々家にいたことを「発見」したように、確かな内面の変化は達成されるのです。
原書の発表は1967年。現代の観点からは甘すぎる話のようにみられるかもしれませんが、このようなスタンダードな美談はいつの時代も必要です。