『マイク』(アンドリュー・ノリス)

マイク: MIKE (児童単行本)

マイク: MIKE (児童単行本)

将来を嘱望されるテニス少年のフロイドは、元テニス選手の父の指導を受け頂点を目指していました。しかし、テニスコートにマイクと名乗るフロイドにしか見えない青年が乱入したことから、運命が狂っていきます。精神科医のピンナー医師の支援を受けながら、フロイドは自分の望む人生を探っていきます。
フロヤとかポンプヤみたいな主人公の名前をみれば、作品の意図するところは明白です。フロイドの親は、自分のしていることが教育虐待であるなんて夢にも思っていません。しかしフロイドの本当の望みは抑圧され、幻覚というかたちで姿を現すことになります。
そしてフロイドの人生は紆余曲折を経て本来の方向に向かっていきます。この紆余曲折がいい具合の温度なので、この作品はロマンチックな運命論を描いたものとして受け止めることができます。そもそも精神分析的な思想もロマンチックな運命論の産物といえなくもないので、この方向性は自然です。