『ぼくたちがギュンターを殺そうとした日』(ヘルマン・シュルツ)

1945年のドイツの農村が舞台。村の子どもたちは、難民の子どもで「頭がいかれている」と見做されているギュンターという少年に石を投げつけて暴行し、はては口封じのために殺害しようと画策します。
子どもが子どもを殺すということは、いつの時代のどの地域でも起こりうることですから、時局にばかり目を向けてしまっては本質を見失うでしょう。ただし、この時代のドイツの大人が悪い見本を示していたことも忘れてはなりません。すなわち、「価値のない人間は生きるべきではない」という思想です。もちろんこの思想は過去のものではありません。むしろ差別思想に基づく未曾有の大量殺人を招いた現代の日本でこそ、正面から向き合わなければなりません。
子どもの暴力、差別が生む暴力、戦時の暴力、そして、人を殺す目的でつくられた銃という道具。さまざまな暴力が折りかさなり、重苦しい作品になっていました。