『SFショートストーリー傑作セレクション 宇宙編』(日下三蔵/編)

日下三蔵編による児童向け短編アンソロジーが、めでたく2期に突入しました。2期の第1弾となる「宇宙編」収録作は以下の通りです。

小松左京「宇宙鉱山」
眉村卓「時間と泥」
石原藤夫「バイナリー惑星」
筒井康隆「星は生きている」
光瀬龍「宇宙救助隊二一八〇年」
星新一「処刑」

なんという美しいラインアップ、構成なのでしょうか。まずは「宇宙鉱山」、超巨大スケールの宇宙構造物で殴りつけます。そして、おもしろ宇宙生物を次々と繰り出し、人類の常識をどんどん破壊していきます。
最後には星新一作品のなかでも人気の高い「処刑」を配置。銀色の玉ひとつを渡して赤い惑星に犯罪者を置き去りにするという、残酷な刑罰の物語です。銀色の玉のボタンを押すとコップ1杯の水を手に入れることができますが、ある回数ボタンを押すとそれは爆発して確実に死を迎えることになります。なによりおそろしいのは、爆発までの回数は銀色の玉ごとに異なり、何回で爆発するのか受刑者には知るすべがないということでした。この上ない恐怖の物語であり同時に至高の救済の物語でもあるこれを宇宙もののSFアンソロジーの最後に配置するセンスには、おそれいるしかありません。
小松左京に始まり星新一で終わるとは、つまり完璧ということです。罪深い日下三蔵は、またしても多くの若者を決して這い上がることのできない沼に沈めてしまうことになるのでしょう。今後は「超能力編」「怪獣編」「破滅編」の刊行が予告されています。これからもこのシリーズから目が離せません。