『ルドルフとノラねこブッチー』(斉藤洋)

忘れたころに新作の出る「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの5巻が登場。約30年で5冊、こういうゆったりペースが許されるのが児童文学のいいところです。
なにかとルドルフとからむことの多かったブッチーに、転機が訪れます。急に文字を習いたいと言い出し、ルドルフが指南役を引き受けます。そんななか、茨城に引っ越したブッチーの元の飼い主が近辺に現れているらしいという情報が流れます。ブッチーは元飼い主を探そうと茨城に旅立つことを決意、ルドルフとイッパイアッテナもその手助けをします。
あいかわらず教養あふれるイッパイアッテナと、どんな場面でも変なことが気になってしまうルドルフのキャラは変わらず、安定した楽しさを提供してくれます。今回の大きな課題は、どうやってブッチーの元飼い主の住所をつきとめるかというもの。ブッチーはねこなので、飼い主の名前すらきちんと認識していません。人間の文字を読めるというイッパイアッテナの特殊能力があっても、情報が全然足りないので捜査は難航します。ここをどう工夫して手がかりを得るかというのが、この巻のみどころです。
もちろん、燃えるねこバトル展開もあります。イッパイアッテナがブッチーの必殺技のスリーパーホールドの弱点と克服法を指摘したことが布石になって、圧倒的不利な状況での頭脳バトルを盛り上げます。
ルドルフとブッチーの友情の熱さとイッパイアッテナ親分のかっこよさを、存分に堪能させてもらえました。