『24時間のキョーフ 2 夜明け前のキョーフ』(日本児童文学者協会/編 軽部武宏/絵)

夜明け前のキョーフ (24時間のキョーフ)

夜明け前のキョーフ (24時間のキョーフ)

  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: 単行本
日本児童文学者協会編のホラーアンソロジー。そのなかからベテランの実力を見せつける2作を紹介します。
岩瀬成子の「白い髪を三つあみにしたものすごく大きなおばあさん」はタイトルの時点ですでに怖いです。これは主人公の未央のおかあさんがよく語る怪談で、大きなおばあさんが夜中にうちの冷蔵庫の食べ物を食いあさるというものでした。大人が適当に言ったホラが子どもの想像力のなかでどんどん実在感を増していくさまが読ませます。子どもの想像力の暴走を描くのは岩瀬成子の得意技ですが、それをホラーというジャンルに落としこむとここまで怖くなるのかと、驚かされます。
ナンセンス童話の名手内田麟太郎の「時の病」は、創作落語です。名前に「女」が
入っているから山女魚も避けるほどの女性恐怖症の若者の物語。これは大人の濁った目で読むとかなりきわどい艶笑噺とも読めるのですが、それよりも羞恥心が高じて若者が肉塊になってしまうグロテスクな展開がぶっとんでいます。
イラストは怪談絵師として人気の軽部武宏。おおきなおばあさんも肉塊もインパクトが強く、夢に出てきそうです。