『イケてる! ろくろ首!!』(丘紫真璃)

轆轤六花は、自分の名前が、イヤでたまりませんでした。「六花」のほうはまだしも、「轆轤」のほうなんて、見るからに、おどろおどろしくて、コワーイ雰囲気ですし、書くのもすごーくたいへんです。
おまけに、これ、「ろくろ」って読むんですけどね。クラスのワルガキどもに、「ろくろ、ろくろ、ろくろ首~」って、いっつも、からかわれてしまうんです。

この書き出しの語り口がいいですね。優しく読者をもてなしてくれる語り手の姿勢に、一気に物語の世界に引き込まれてしまいます。
轆轤六花(ろくろろっか)は、ろくろ首の一家の女の子。ろくろ首には首が伸びるタイプと首が抜けるタイプがいますが、轆轤の一族は両方の能力を持っています。さらに、二日に四回首が伸びているところを目撃されると目撃者をろくろ首にしてしまうという呪いの力も持っています。六花はクラスメイトの早瀬君にろくろ首形態を目撃されてしまい、早瀬君をろくろ首にしてしまいます。一家は新たな仲間ができたことを喜び、早瀬君を立派なろくろ首として育て上げようとはりきります。
一家は、新入りろくろ首の早瀬君をうどんパーティーで歓迎します。なんでも、首を伸ばした状態でうどんを流し込み、のどごしを楽しむのがろくろ首の醍醐味なんだとか。どうやったらこんな狂った発想が出てくるのでしょうか。
ろくろ首一家は倫理観がぶっとんでいて、六花は早瀬君に恨まれるのではないかと心配しているのに、お母さんはろくろ首にした友だちから感謝されているととりあいません。お母さんの友だちは、首を伸ばしてしつこいセールスマンを追い払うとか、ろくろ首能力を便利に使いこなしています。兄がろくろ首にした友だちは、野球でこっそり首を伸ばして捕球する技を極め、守護神と呼ばれるようになっています。兄はサッカーをしている早瀬君に、首を伸ばしてヘディングする技を会得させるべく、頼まれもしないのにコーチ役を引き受けます。
そして、「生首のコントロール方法」とか「首カチンコチン病」とか「ろくろ巨人」とか、異次元のワードを次々と繰り出し、休む間もなくギャグをたたみかけてきます。
バカバカしさ一点突破でここまで読ませてくれる作品は貴重です。上田バロンの、自在に伸びる首を躍動感たっぷりに描いたイラストも必見。とてもおもしろかったです。