『ドクルジン』(ミロコマチコ)

玄人筋で評判になっているらしい「亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉」の第1弾。
まず2匹の魚、横長の画面一杯ににょろつく2匹の蛇が登場。2匹の魚は目のようになり顔のようなものを形作ります。口の先にさらに5匹の蛇(ミミズ?)をはやした蛇は、それを指のように使って岩をつかみ巨大な山を建設します。やがてそれらは合体し、巨人のようになります。
この作品の対象年齢は、おそらく言葉を習得しそれによって理屈を組み立て世界を理解することに慣れる以前の人々です。だから、テキストのほとんどは擬音で、意味をなしていません。タイトルにある「ドクルジン」という意味不明語は、巨人を表す固有名詞のようでもあり、そのありさまを表す擬態語のようでもあります。言葉で意味を理解しようとする必要はありません。色彩と音の奔流に身を委ねればいいだけです。
描かれているのは、あまりにも圧倒的なエネルギーの表出です。そのすさまじさは、創世神話のようでもあります。ただし、このエネルギーだけを浴びせられたら読者は疲弊してしまいます。作品の最初と最後には闇が描かれていて、作品に収まりと安心感を与えてくれています。