『にんげんクラッシャー、さんじょう!』(最上一平)

にんげんクラッシャー、さんじょう!

にんげんクラッシャー、さんじょう!

「にんげんクラッシャー」って「こどもブロイラー」みたいな語感で怖いなと思いながら手に取って、申し訳なかったと思っています。
ある日の登校時間、いがらしくんはふだんあまり仲良くしていないりゅうせいくんに出会います。両親の離婚でしばらく前に名字の変わったりゅうせいくんは、工事現場でかにのはさみみたいなので建物を破壊している機械を眺めていました。あの機械は「クラッシャー」といって、別れた父親がその「オペレーター」をしていたのだと、りゅうせいくんは教えてくれました。ふたりは副校長先生が迎えに来るまでクラッシャーを眺めていて、学校に遅刻してしまいました。いがらしくんは放課後りゅうせいくんを誘い、クラッシャーごっこをしてふたりで「にんげんクラッシャー」に変身します。
葉っぱを拾ってくるくる回しながら登校する様子とか、スーパーから発泡スチロールをもらってきて遊び道具にするとか、低学年の小学生らしい行動の描写が楽しいです。
いがらしくんの行動は、深い考えのない同情心から出たものなのかもしれません。だとしても、この瞬間に生まれたふたりの友愛は本物です。そんな宝石のような時間を切り取った美しい作品でした。