『保健室経由、かねやま本館。2』(松素めぐり)

保健室経由、かねやま本館。2

保健室経由、かねやま本館。2

傷ついた中学生のための期間限定の湯治場「かねやま本館」で、チバはアツという無二の親友を得て、ふたりで「紅白温度計」というお笑いコンビを結成しました。ところがアツは、「かねやま本館」のルールを破り、のぞくとここでの記憶を失ってしまうといわれている紫色の暖簾をくぐって消えてしまいました。髪を赤く染めていて陽気にふるまうアツには学校で完全に孤立している自分と違いそれほど深刻な悩みはないと思っていたチバは、彼の本心を探るため彼が遺した『オレ様のネタ帳』というタイトルのつけられた赤いノートの記述を追っていきます。
山姥のようないでたちの養護教諭がいざなう地下の湯治場を描いた第60回講談社児童文学新人賞受賞作『保健室経由、かねやま本館。』の続編が早くも登場しました。
2巻にして早くも作中ルールを破り、定石を外すという思い切った展開に驚かされます。作中には喪失感が漂い、親友の不在のみが物語を駆動させていきます。遺されたノートを読むことで親友の秘密を徐々に知っていくという構成が巧みで、作品は終始読者の感情を揺さぶり続けます。
そして、チバの「かねやま本館」の滞在期間が切れてからの物語の加速度で、さらに読者は殴られます。時間経過があまりに早いので、それからのチバの世界にはアツへの思いしか存在しないかのように錯覚させられ、その感情の激しさに打ちのめされてしまいます。
この作品に関しては、エモの強さに屈服させられたとしか感想のいいようがありません。強いBL児童文学として語り継がれる作品になりそうです。