『火狩りの王 四 星ノ火』(日向理恵子)

火狩りの王〈四〉 星ノ火 (4)

火狩りの王〈四〉 星ノ火 (4)

火に近づくと人体が発火して死んでしまうようになった世界を舞台にしたポスト・アポカリプスSF児童文学の第四部。改造人間たちの狂宴もいよいよ終局に到達しました。
エンタメとしては、消化不良の感は否めません。凄惨な残酷描写や、高貴な姫神の姉妹が心中したともとれる美的な場面など、みどころもありました。しかし、物語的なカタルシスは欠如しています。
この本の煽り文句には、「〈揺るる火〉が、最後に下した決断は?」とあります。決断を下すのは主人公側の灯子でも煌四でも明楽でもなく、他者に委ねられてしまうのです。主人公が主体性を発揮できないのであれば、物語がうまく収まった感じがせず、読者は気持ち悪さを抱えたまま置き去りにされてしまいます。
おそらく、火狩りの王が誕生すれば火を治めることができるようになり世界が救われるという序盤に開示された設定を素直に信じていた読者は少数でしょう。このような現実を生きている私たちは、英雄を待望する物語を求めてはならいのだと戒められているのかもしれません。それにしても、その無意味さをここまで徹底させたことには驚嘆させられます。
人類の未来に確かな希望はなく、作中人物たちは過酷な世界で生き続けなければなりません。作品はどこまでも無意味さ・無力さを見つめています。いまの時代の空気が如実に反映されているのは、このような作品なのかもしれません。