『女神のデパート 5 決戦のラスト・セール!』(菅野雪虫)

つぶれかけた老舗デパート弁天堂の再建ストーリーもいよいよ最終巻。銀行の融資の条件である前年比120%の売り上げ達成が当面の弁天堂の目標です。ところが、弁天堂が違法な児童労働をさせているという捏造記事が週刊誌に出たり、超絶ホワイト企業である弁天堂でひとりブラック労働をしていたおじがとうとう倒れたりと、逆境が続きます。
週刊誌記事の件ははるかさんの兄の陰謀で、彼が正体を現してくれたがゆえに結羽とはるかさんの絆が深まったのは結果オーライです。さまざまな事件を描きながら、作品は前世記憶や組み体操・二分の一成人式と、気に食わないものにどんどん喧嘩を売っていきます。この戦闘的なスタイルは、現代社会派児童文学の旗手である菅野雪虫らしいです。
そして物語の収束ポイントは、初売りセールのポスター作りになっていきます。当初の案であった「新しい年・変わらぬ絆」というキャッチコピーが保守的なのではということになり、活発な議論が巻き起こります。この広告はもちろん、営利企業が商売のために出すためのものではあるのですが、街の人々の幸福な生き方を示すビジョンであるという側面も持っています。弁天堂は街とともにどう生きていくべきなのか、議論は深まっていきます。
ということで、デビュー以来異世界や別の時代を舞台に社会派児童文学を書き続けてきた菅野雪虫の珍しい現代を舞台にした作品ということで注目されていた「女神のデパート」シリーズは、きれいに終幕を迎えました。