『小さな悪い本』(マグヌス・ミスト/作 トーマス・フッスング/絵)

小さな悪い本

小さな悪い本

日本人がこのタイトルをみると思い浮かべるのは宮部みゆきのこれですが、そこまでの猛毒本ではないので安心して子どもに手渡して大丈夫です。
怪談えほん (1) 悪い本

怪談えほん (1) 悪い本

本自体が、悪い本になるために読者である子どもをたぶらかそうとするという設定の作品です。本は読者にミッションを課したりちょっとしたクイズを出して次に進むべきページを推理させたりして、とびとびにページをめくらせます。このゲームブックのような仕掛けにより、読者は主体的に物語に参加している感を味わえ、悪事の共犯者感も楽しむことができるようになっています。
本が序盤に読者に義務づける悪事が、非常にたちの悪いものでした。「わたしは18歳以上です」と嘘をつけというのです。これには、二重の悪意がこめられています。ひとつは言うまでもなく、このありふれた嘘をつくという罪を犯させること。もうひとつは、この嘘をつくことが不可能な大人の読者を排除することです。
合間に箸休め的にちょっと怖い話も差し挟まれています。おならをすることを禁じられて空気膨れするよい子の話とか、悪趣味だけどグロすぎず適度に笑えるちょうどいい温度のものです。
こういうちょっと不健全な香りのする読者参加型の趣向の本には、小学生のうちに1冊くらいは触れさせておきたいところです。