『ばかみたいって言われてもいいよ』(吉田桃子)

ばかみたいって言われてもいいよ1

ばかみたいって言われてもいいよ1

ばかみたいって言われてもいいよ2

ばかみたいって言われてもいいよ2

ばかみたいって言われてもいいよ3

ばかみたいって言われてもいいよ3

カバーイラスト・デザイン、そしてタイトルの勝利。背表紙もシンプルでシックなデザインなので、3冊そろえて並べたくなります。
オシャレが大好きな中2女子の杏都は、父親の不倫が原因で家庭崩壊し、母親の田舎に都落ちすることになります。引っ越し先では隣家に同じ年の男子が住んでるというベタベタの少女まんがお約束展開にあいます。また、センスのいい古着屋のおにいさんに出会ったりして、慣れない田舎暮らしにとまどいながらも自分の世界を広げていきます。
主人公のいきすぎた自虐がおもしろいです。不倫した人間はゴミ、ならその子どもである自分はゴミ以下の存在であると。親は関係ないんだから、そんなに自分を卑下しなくてもいいのに。それでいて、商店街の会議で古着屋のおにいさんがいじめられていると豪快に啖呵を切ったりする勇ましさも持っています。
自己評価が低いけどやるときはやってやる、こういう人物造形も少女まんがの主人公っぽいです。個性的なのにキャラ紹介欄では「ふつうの女の子」と書かれている感じの「ふつう」さ。同世代の共感を呼びやすいキャラ造形です。
テーマは、タイトルで明言されているとおりです。他人からばかにされても知るもんかと。他人の評価に左右させず自分らしく生きていく道を模索していく杏都の姿は、好感度が高いです。
児童文学の読者はすぐ卒業してしまうので、1年以内に全3巻で区切りをつける潔さは親切です。内容がいいのはもちろんとして、コンパクトさや本のデザイン性も含めて読者に愛される作品になりそうです。