『インディゴをさがして』(クララ・キヨコ・クマガイ)

インディゴをさがして

インディゴをさがして

色のなかで、いちばん最後に名前がついたのが、藍色(インディゴ・ブルー)でした。
この色は、世界のたくさんの言葉で、それぞれちがうふうによばれていたのです。
たとえば……
「青リンゴ色がまじったベルリンブルー」とか、
「春のおわりのたそがれどきの色」とよばれることもあれば、
ただ「愛」という言葉でかたられているところもありました。

様々な文化が混成されてできた贅沢な作品です。著者はアイルランド人の母と日本人の父を持つ、カナダ生まれの作家。その作家が日本の染織家志村ふくみから着想を得てこしらえたのがこの作品です。本のはじめには志村ふくみの詩も掲載されています。そして、素材は「色」というあらゆる文化を越える世界共通言語です。
主人公は、色を見つけ話しかけることができるインディゴという少女。彼女は王から、永遠の命を与える力を持った色の探索を命じられます。
インディゴは、未発見のその色はさかいめの世界にあることを知ります。海の深いところにある色、虹のいちばん深いところにある色、昼と夜のさかいめの時間に山頂のかげの真上をただよう色。さかいめとは、童話が最も得意とする神秘の世界です。
地上のあらゆるものを手に入れた権力者が最後に不死を求めるのは、古今東西共通です。しかしこの王は、願っていたはずのそれを手にしかけるとひるんでしまい、結局逃げてしまいます。世俗の権力者ごときにさかいめの神秘の世界はふさわしくないのです。
作品のテーマは、まさに神秘そのものです。神秘の世界と読者の橋渡しをできる童話の力をみせつけるような美しい傑作でした。