『金の鍵』(ジョージ・マクドナルド)

金の鍵

金の鍵

人間は、ふつう、だれでも、性質の異なる二つの世界に関心を持っています。その一つは、日常の世界、自分の五官によって知ることのできる世界です。二つめは、自分の想像によって創り出すことができるだけでなく、創るのをやめようと思っても、やめることのできない世界です。(中略)
自分の五官を通して受け取る世界がすべてで、それ以外の世界を想像することのできない人は、人間と呼ぶに値しませんし、自分が想像した世界を、五官で受け取る事実から成り立つ世界と同一視してしまう人は、正気を失います。
(W・H・オーデン「作品によせて」より)

『金の鍵』と『かるいお姫さま』の愛蔵版が同時刊行。ジョージ・マクドナルド作です。モーリス・センダック絵ですよ。そして、この高級感あふれる装丁。どんな言葉を付け加える必要があるでしょうか。
そもそも、わたしのような浅薄な読者はW・H・オーデンの「作品によせて」によってほとんど口を塞がれているようなものです。現代心理学の影響でおとぎ話の象徴狩りをするのは致命的であると、あらかじめ釘を刺されているのですから。
大伯母さんから虹のはしっこで金の鍵を見つけることができると教えられた男の子は、妖精の国を囲う森に虹が架かっているのを発見し、近づいていきます。日が落ちても虹が燃え続けるという現実離れした光景に圧倒されたら、あとは夢幻の世界に落ちていくだけ、それだけが読者にできることです。