『妖怪コンビニで、バイトはじめました。』(令丈ヒロ子)

妖怪コンビニで、バイトはじめました。

妖怪コンビニで、バイトはじめました。

カバーイラストがいいですね。なんか足が変なアヒル(?)、ドアに入ろうとしている人々はサイズがおかしい。眺めれば眺めるほどSAN値が減りそうです。
主人公のイズミは、人外さんや人間の本質を見ることができる霊感体質の少年。父親とふたり暮らしでしたが、新しい母親ができたことが悩みの種でした。イズミはインドア派でおとなしいタイプだったのに、新しい母親は善人だけど性格が明るすぎて相性が合いません。イズミは柴犬頭の男が店長をしている人外さん向けの薄暗いコンビニに迷いこんで、そこでホラー系ユーチューバーの女子やイケメンダンサーの幽霊男子と出会い、騒動に巻きこまれることになります。
イズミは物事をシステマティックに理解することを好んでいて、さまざまな人外さんに対応した商品や棚の配置に興味を持ちます。他の主要登場人物も感情より合理で動く人間ばかりで、妖怪アイテムを使わないと感情を爆発させることはありません。
合理性を重視する一方で、情緒を描くことにも長けているのが、令丈ヒロ子の天才性です。妖怪アイテムをきっかけに感情を加速させ、死ぬ気でやってやるというやけっぱちの情動と怪奇現象の狂騒が展開されます。そして、悲哀に近い幸福感をしっとりと描いていきます。