『見た目レンタルショップ 化けの皮』(石川宏千花)

見た目レンタルショップ 化けの皮

見た目レンタルショップ 化けの皮

読売中高生新聞連載作。狐の力で人々に容姿をレンタルする店に訪れる顧客たちの物語です。第1話では、自分の容姿に自信のない女子五月が美少女の容姿を借りて、おしゃれなショップに行きます。こういう店では容貌の劣る自分は店員から塩対応されると思っていた五月ですが、本来の自分の容姿と入れ替わっている同伴していた狐が店員にちやほやされているのを目撃しています。そして、見た目ではなく内面が美少女であることが大切なのだと悟ります。
現実に、容姿による差別・ルッキズムは厳然と存在します。しかしこの作品は、個人の心がけの問題にすりかえています。
石川宏千花は、おそらく善人なのでしょう。善人であるがゆえに、努力は報われるはず、報われないのは本人の自己責任とする公正世界信念に陥っているようです。この誤謬に陥っている人には、差別や社会の構造悪は見えません。ゆえに、弱者に対しておそろしく冷淡になってしまいます。
この話を読んで、わたしが石川宏千花に苦手意識を持っている理由がだいたいわかったような気がしました。