『わたしたちの物語のつづき』(濱野京子)

わたしたちの物語のつづき (読書の時間 6)

わたしたちの物語のつづき (読書の時間 6)

  • 作者:濱野京子
  • 発売日: 2021/02/26
  • メディア: 単行本
小学6年生の碧衣は、転校していった親友との仲がぎくしゃくしたままであることに悩んでいました。そんなとき学校の昇降口で、妖精が主人公の物語の書かれたノートを拾いました。その物語に魅了された碧衣は続きが読みたくなり、作者を探そうとします。しかし探し当てた作者には続きを書く意欲がなく、他の子に作品を見せてもいまいち不評。しかし物語の続きを諦めない碧衣は、いろいろと奔走します。
物語の続きを読みたい気持ち、自分の好きな作品が他の人に受けなくて傷つく気持ち、わかるわかるという共感で作品を読み進めていくことができます。物語の続きが読めない場合どうすればよいか、仏像を彫るというのが古来伝わる方法ですが、これは実効性がありません。碧衣は現実的な方策を模索します。物語がおもしろくないというなら、わかりやすくなるように文字を大きくしたる、イラストもつけたる、作者が書きたくないというなら、自分が叱咤激励してやると、その試行錯誤の過程が楽しいです。
物語を好んで読むタイプの子は、クリエイターに憧れる傾向があります。この作品はクリエイターではなく、クリエイターの支援をしクリエイターと受け手をつなぐ役割にスポットを当てているのがおもしろいです。碧衣の悩みや望みが物語に有機的につながっていて、活動のなかで自分の適性や可能性をみつけさせる構成がうまいです。こういった作品に励まされる子はたくさんいるでしょう。