『世々と海くんの図書館デート 3 ハロウィンのきつねは、いたずらな魔王様といっしょにいたいのです。』(野村美月)

3人の姉に愛されて育ったピュアなきつねの世々と、イケメンで秀才だけど家族関係が冷えきっている海くんの異種間恋愛物語第3弾。いつものように世々は絵本を読み海くんは勉強をする図書館デートをしていますが、海くんは疲れている様子で世々の不安はつきません。ちょうど世々が読んでいたのは、子どもの教育によろしくない猟奇絵本でした。きつねさんが鳥たちの首を「すぽん!」するという恐ろしい内容に、やはりきつねは有害生物だと思われるのではないかとおびえてしまいます。さらには姉たちも、人間は動物の内臓を引きずり出してハクセイにするとか、金属バットでなにやらするとか、やたら暴力的なことを言って世々をおびえさせます。
ただし姉たちの行動は世々が人間にだまされないか心配する愛情のなせるわざで、そのに闇を見いだすのは筋違いです。社会人と大学生の姉が中学生の仮装をして中学生男子を誘惑するという異常行動もしますが、それは海くんの愛を試すためであり、やはり世々への愛情ゆえのものといえます。
ここで、異類婚したきつねの女性が子どもを産むとチャームの魔法を使えなくなるという闇設定が開示されます。ただしこれも、世々と海くんの絆の純粋さを強調する役割を果たしています。という理解でいいんだよね、いまのところは。
ハッピー ハロウィン! (講談社の幼児えほん)

ハッピー ハロウィン! (講談社の幼児えほん)

3巻では姉妹の関係性がクローズアップされます。第3話の世々の友だちのまひるちゃんとその妹のさやのちゃんの関係性も、紆余曲折ありながらよい方向に落ち着きます。
ということで、3巻も幸福感に満ちた物語になっていました。そのことがかえって今回ほとんど具体的に触れられなかった海くんの家庭の状況、とくに妹との関係を気がかりにさせているようにも思えますが、考えすぎかな。