『ずっと一年生!?  トラブル解決大作戦』(宗田理)

2003年に角川文庫で刊行された『マミーよ永遠に』がつばさ文庫化されました。名門校私立生生学園高校には、先生よりも権力を持った名物生徒がいました。留年を繰り返してずっと高校1年生を続けている「マミー」と呼ばれている女子(?)がそれです。豪快な人間力と料理の腕で平和的に学園に君臨するマミーの活躍が描かれます。
校長先生が大事にしているツボを割ってしまう事件の隠蔽工作から始まり、昭和のユーモア小説の香りを残したちょうどよい温度の事件が続きます。1話完結型の短いエピソードが並んでいるので、読んでいて疲れないのもよいです。こういうテンポの作品はいまでは少なくなっていますが、こういうのが娯楽読み物としてしっくりくる小学生もいるはずです。
やはり学校という閉鎖空間には秩序を破壊するトリックスターが必要で、そういう意味で年齢不詳でキャラ格が異様に高いマミーは非常に魅力的です。得意料理の「マミー焼き」の中毒性からなにか盛っているのではないかという疑惑も持たれますが、それは考えすぎでしょう。
わたしが一番好きなエピソードは、教育実習でマミーの元同級生が帰ってくるやつです。高校時代に先生を自転車で轢いて病院送りにしたという武勇伝を持つ彼女は、唯一マミーと対等以上に渡りあえるキャラでした。マミーにぐいぐい迫り最終的には学校に持ちこんだ生物兵器でノックアウトするという、秀逸な百合コメディになっていました。