『わたし、パリにいったの』(たかどのほうこ)

わたし、パリにいったの

わたし、パリにいったの

姉妹の関係性とはなんなのか、これは永遠の難問です。少なくとも姉には先に生まれたというアドバンテージがあるはずですが、だからといって力関係が姉の方が上とは限らないのがおもしろいところです。
はなちゃんとめめちゃんはとても仲のよい姉妹。ふたりでパリへの家族旅行のアルバムを見るのが大好きで、今日も飽きずに見ていました。このときめめちゃんはまだ生まれていなかったのですが、はなちゃんがアイスクリームを落としたこと、通りかかったおねえさんが落としたハンカチを拾ってあげたこと、どんなエピソードも「しってる」と答えます。
はなちゃんは何度も話を聞いたので覚えたのだろうと思いますが、めめちゃんは自分はおかあさんのおなかのなかで見ていたのだと言います。ここで、ふたりの力関係は妹が優勢になります。めめちゃんの語る話の方がディテールが細かく色彩や感覚の解像度も上がっいて、パリの風景がさらに魅力的に立ち上がってきます。
はたしてめめちゃんは本当に見ていたのか、それともおかあさんから聞いたことを話しているのか。はなちゃんが問い詰めるなかで、ふたりはおそろしくも笑える光景を生成してしまいます。このあきれるほどの光景はたかどのほうこならではの奇想で、傑作としかいいようがありません。
ふたりがしていたことは結局、共同して空想上の化け物を作りあげる作業だったのだということになります。少なくともこの作品における姉妹の関係性は、共犯者に近いものであるようです。