『みんなふつうで、みんなへん。』(枡野浩一)

みんなふつうで、みんなへん。 (読書の時間 5)

みんなふつうで、みんなへん。 (読書の時間 5)

  • 作者:枡野浩一
  • 発売日: 2021/01/06
  • メディア: 単行本
3年1組の子どもたちの勘違いや思い違いをテーマにしたショートストーリー集です。先生から「ボールをわすれずに」と言われたのを自分に都合よく解釈してずっとほしかったオレンジ色のボールを買ったけど、本当は理科の実験用にボウルが必要であったというエピソードから始まり、いかにもありそうな失敗談が並べられています。枡野浩一の人物像を知っていたら、「これは実体験では……」と想像できるようなものも散見されます。
子どもの恥を素材にしているので、デリケートに扱わないと小学生読者にいやな思いをさせるおそれがあります。この作品は物語化を避け淡々と記述することで、その懸念を払拭しています。小説というよりもスケッチか事例報告のようで、過度に笑い話にしたり共感を押しつけたりするような要素は薄くなっています。子どもの失敗をただ当たり前にそこにあるものとして受け入れているようです。
たとえが適切かどうか自信がありませんが、青木淳悟の『私のいない高校』のような読み味が感じられました。