『撮影中につきおしずかに! 1 特殊効果に魔法少々』(にかいどう青)

「ウサギの足ってさ、むかしは切りとってお守りにしてたんだって。興味深いね」

ポプラ社の児童文庫新レーベル「ポプラキミノベル」でのにかいどう青の新シリーズ。たった3人だけの中学校の映画研究部の物語。魔法少女でこっそり魔法で映画の演出をしているハル、イケメン女子だが救いようのない映画オタクのカズキ、超絶美少女で演技力もあるけど腹黒の関西弁女子ココと、曲者揃いの少数精鋭メンバーです。この映研では広報のために依頼人を募ってオーダーメイドの映画を制作する活動をしていました。そこから起こる事件を解決する日常の謎ミステリというのが、この作品の軸になります。
はじめのエピソードで、この作品の方向性は確定されます。カップルの思い出作りのために様々な名画の名シーンをオマージュした映画を制作中のメンバーは、カップルの様子がおかしいことに気づきます。ご丁寧に主演カップルが破局したことで知られる『シザーハンズ』オマージュを入れて不穏さをねじこむ意地悪さがにかいどう青らしいです。そして、真相が明らかになって恋という言葉・概念の意味が崩壊し書き換えられる終局のダイナミックさには、唖然とさせられます。
事件のエピソードの合間に、映研メンバーの過去のエピソードも差し挟まれます。なんの苦労もなく学校生活を送っているようにみえる美少女たちの裏側にあるものはなんなのか、水面下のドロドロは相当なもののようです。
ミステリと闇と百合がにかいどう青の持ち味。このシリーズはその特性を生かせるシリーズになりそうです。