『夏のカルテット』(眞島めいり)

描写力が圧倒的だったデビュー作『みつきの雪』で児童文学ファンを震撼させた眞島めいりの第2作。たまたま図書委員で同じ班になった中学1年生4人が、夏休みのグループ研究で音楽活動をする物語です。学校という階級社会の周縁にいる彼らの活動は、やがて悪意にもさらされることになります。
学校の片隅にいる子どもたちを徐々に熱狂の世界にいざなっていく道筋の立て方がうまいです。学校が改装工事中で騒音のためほとんど学校図書館に人が寄りつかないという設定の絶妙なこと。ここで図書委員の仕事ははほとんど意味をなさなくなっているので、反社会的な性行のない子どもたちが、どうせ聞こえないからここで楽器を鳴らしてもいいじゃんというあたりから逸脱しはじめていきます。夏の空気に浮かされてどんどん盛り上がっていく様子の楽しそうなこと楽しそうなこと。そしてそことの落差で、後半のシリアス展開も引き立ちます。
『みつきの雪』は寒さと静謐さ、『夏のカルテット』は暑さと喧噪と熱狂という対称的で質の異なったものになっていましたが、こちらでも眞島めいり一流の描写力が発揮されていました。