『トムと3時の小人』(たかどのほうこ・平澤朋子)

母と散歩中にふらっと入った古道具屋で『トムと3時の小人〈下〉』という本を見つけて興味を持った少年つとむの物語。そのときは手に入れ損ねたので、図書館で探そうとしますが、思いがけない展開になります。
この作品の主眼は、物語の入り口の楽しさを描くところにあります。まず古道具屋の古本という入り口が魅力的です。しかし図書館に行くと、そのタイトルの本は上下巻になっていませんでした。ここで作中で何度か起こる裏切りの1回目がなされます。そして、その1冊の『トムと3時の小人』を読むためにつとむは、いまでは人の気配の少ないいかめしい旧図書館に導かれます。図書館の秘密空間も不思議な世界の入り口として謎めいた引力を持っていて、天沢退二郎の夜間閲覧室なんかが思い出されます。
入り口があれば通常は出口があるはずです。でも、高楼方子作品となるとどうでしょうか。最悪ハリネズミの針に刺し殺されたり、無限ループ地獄に陥ったりするのが高楼ワールドです。入り口の先には、危険な無間の沼が広がっているかもしれません。