『分解系女子マリー』(クリス・エディソン)

マリーはものを分解するのが好きな工学女子。自分の趣味のためと、多発性硬化症を患っている母を助けるために、トップレベルの科学を学びたいと願っていました。そんなマリーのもとに世界的なIT企業のバンス社からサマーキャンプの招待状が届きます。世界中から優秀な子どもを集めて開催されるバンスキャンプではロボットの開発競争がおこなわれ、マリーも優勝を目指して奮闘しますが、そのうち世界的な危機に巻きこまれてしまいます。
ホグワーツからの招待状がドローンで届けられるというのが現代的です。ホログラムやらなんやら魔法めいた小道具が天才の集まる非日常を盛り上げてくれます。
マリーはキャンプでの新しい出会いにも期待していました。そして、科学女子・数学女子・IT女子と仲良くなり、Science・Technology・Engineering・MathematicsのSTEMキッズ四人組を形成し、きらら的空気になります。
むこうのYA・児童文学ではジャンルを形成しているといっていいくらいサマーキャンプものはたくさんあります。ただし見方を変えると、面識のないメンバーが集められるという設定は、デスゲームもの・バトルロワイヤルもののようでもあります。この作品では殺し合いまではしませんが、勝者がひとりだけであることは同様です。キャンプの序盤にマリーは主催者から「この中にスパイがいる」と吹きこまれ、疑心暗鬼の不穏な空気も流れてきます。バトロワものでは、……がキーパーソンになるというのもお約束。そういった意味でも娯楽性が確保されています。
理系女子のエンパワメントを指向するテーマで、マリーが最終的に開発するロボットの方向性も現代的。いまの時代に求められる娯楽児童文学です。