『プロクター博士のおならパウダー』(ジョー・ネスボ)

「意味のないおならブーブーを、いちばんよろこぶのは?」
「ふむ」博士が答える。「そりゃ、子どもだ。ついでに、ちょっと子どもっぽい大人も好きだろうな」

「ハヤカワ・ジュニア・SF」の第2弾が登場。第1弾は王道の冒険SFで、次が意味のないおならブーブーだという振れ幅。やはりハヤカワは信頼できます。
ノルウェーの首都オスロに住むリサは、親友が引っ越ししてしまったため落ちこんでいました。しかし、かつて親友が住んでいた家に引っ越してきたニリーという少年と親しくなったことから、騒がしくも楽しい日々を過ごすようになります。ニリーは控えめな体格だけとうんちく(デタラメも含む)を語り出すと止まらなくなる愉快な少年。そんなニリーは近所の「イカレ科学者」プロクター博士と仲良くなり、飲むとはるか上空に飛び上がるほど強力なおならを出すことができる「おならパウダー」という発明品の実験に参加、リサもつきあうようになります。ところがならず者の一家が博士の発明品を横取りしようと悪巧みをはじめ、リサやニリーはピンチに陥ります。
導入部の読者の期待感の煽り方がうまいです。まず4つの地図を提示し、ヨーロッパ、ノルウェーオスロ近郊、オスロ市庁舎周辺と、舞台に近づいていきます。本文では太陽が日本から西へ進みノルウェーに行って、物語の舞台の様々なものを順番に照らしていく様子を記述していきます。「死者の地下牢」と呼ばれる脱出不可能な牢獄、下水道に生息するアナコンダなど。読者はこういった舞台や役者がどんな役割を果たすのだろうと想像力を喚起されることになります。そして物語は、期待を裏切らずご機嫌に進行していきます。
ちょっと驚かされるのは、活字が大きいとはいえ300ページ以上あるこの本の対象年齢を「小学校低学年~」と設定していることです。ハヤカワは、おもしろいものを吸収したがる読者の貪欲さを年齢を問わず信頼してくれています。