『ミシシッピ冒険記 ぼくらが3ドルで大金持ちになったわけ』(ダヴィデ・モロジノット)

時代は1904年のルイジアナ州。天性の冒険野郎テ・トワ、シャーマンのエディ、決して泣かない少女ジュリー、内に輝かしい知性を秘めたティト、この仲良し四人組が主人公を務めます。遊び場の沼地で3ドルを拾った子どもたちは、カタログでピストルを注文します。3ドルは家族の生活を支えるために使えばかなりの助けになる大金、それを無駄遣いしたことでこっぴどく怒られます。しかも届いたのはほしかったピストルではなく古びた懐中時計でした。ところがその懐中時計がヤバいブツであったらしく、四人組は大金を求めて丸木舟でミシシッピ川を旅し、大都会シカゴを目指します。
さまざまな問題を抱えた子どもたちが船出するので、日本の悪い児童文学読みは『ぼくらは川へ』とか口走りたくなるところです。しかし船出は出発点で、その後は思いがけない冒険が待っているので心配はいりません。タイトルに「大金持ちになった」という結論は明示されていますから、ハッピーエンドは確約されているようなものです。
内容やテーマに関しては、あまり先入観を与えそうなことは述べない方がいいでしょう。怪しい懐中時計やらなんやら冒険小説としてのフックはたくさんあるので、特に何も考えず物語の流れに身を委ねれば問題ありません。
物語だけではなく、本のデザインも楽しいです。カタログや新聞記事の図版がたくさん入っていて、20世紀初頭の空気感を想像させてくれます。最近の岩崎書店の翻訳児童文学は重厚な作品でもソフトカバーで出てるのが目立ちましたが、モノとしての魅力の強いこの本はハードカバーで出してもらえてよかったです。