『ぼくらのスクープ』(赤羽じゅんこ)

イダッチと魔王は、5年1組のたったふたりだけの新聞係。イダッチは社会科見学で出会った新聞記者に感化され、学級新聞にすごいスクープを載せようと意気込んでいました。魔王はいつも「魔王」という文字がプリントされたシャツを着ているためそんなあだ名をつけられた変わり者で、新聞係に立候補した動機はなにか、やる気があるのかどうかも判然としないキャラです。こんなふたりの活動が順調に行くはずもなく……。
最初のエピソードは、イダッチが近所のパワハラじじいからピンポンダッシュ犯だと決めつけられ、汚名を晴らすために真犯人を捕まえようと張り込みをするというものでした。ところが逆に近くの商店から不審者扱いされ学校にクレームを入れられ、頓挫してしまいます。その後も、クラスの子が作文の盗作疑惑をかけられる事件や、中学生に自転車ではねられる事件の取材をしますが、どれもうまくいきません。
この作品、なかなか読者をスカッとさせてくれないので、読むのにストレスはかかります。盗作疑惑事件では、そもそも盗作とはなんなのかという定義から突き詰めていき、交通事故ではそもそも道が整備されていないのが悪いのではという問題も浮上してきて、単純な解決を許してくれません。そのうえ相棒の魔王は、いつもイダッチに反対意見ばかり出して足を引っぱっているかのようなふるまいばかりみせるのです。
しかし、イダッチが世界の複雑さを受け入れ、魔王のパーソナリティーを理解するようになると、読者の目に映る景色は一変します。そこから、最終ページに完成した学級新聞を掲載するという仕掛けがうまくはまっています。学級新聞の細かいところにいかにも小学生がやりそうな悪ふざけが入っているのが好きです。